「ベッドに入ると、胸が詰まったようになって息苦しい」「夜中に突然、ハッと息が苦しくなって目が覚めてしまう……」。
妊娠後期、お腹の赤ちゃんが順調に育っている証拠とはいえ、毎晩のように呼吸が浅く苦しい状態が続くと、心まで苦しくなってしまいますよね。今回は、なぜ妊娠後期にこれほど息苦しさが強まるのか、その理由と、呼吸をラクにして深く眠るための寝姿勢・セルフケアをお伝えします。
なぜ妊娠後期は息苦しいの?夜に強まる息苦しさと睡眠不足の原因
妊娠後期に息苦しさを感じる最大の原因は、子宮がみぞおちのあたりまで大きくせり上がり、肺の下にある「横隔膜」をギューッと押し上げてしまうからです。そのため、一度に吸える空気の量が物理的に少なくなってしまいます。
さらに、横になると重力でお腹の重みがすべて胸や大血管にかかるため、夜間に息苦しさが一段と強まるのです。「息がうまく吸えない」という恐怖は脳を興奮させ、深刻な睡眠不足を引き起こしてしまいます。まずは物理的な圧迫を逃がす寝姿勢を知り、肺をラクにしてあげることが何よりも大切です。
大きくなった子宮が横隔膜や肺、血管を圧迫するメカニズム
仰向けに寝ると、数キロに育った子宮と羊水の重みが、お腹の奥を通る太い静脈(下大静脈)を圧迫します。すると、心臓へ戻る血液が減って血圧が急激に下がり、息苦しさや強い動悸、冷や汗を引き起こすことがあります。
これは医学的に「仰臥位低血圧症候群(ぎょうがいていけつあつしょうこうぐん)」と呼ばれるもので、妊婦様なら誰にでも起きる可能性があるものです。だからこそ、妊娠後期は「仰向けで寝てはいけない」と言われるのです。
夜中に突然起きる息苦しさや動悸に対処するための基礎知識
もし夜中に息苦しさや動悸でハッと目が覚めたら、絶対に焦らないでください。焦ると心拍数が上がり、ますます苦しくなってしまいます。
対処法はとてもシンプルで、「すぐに体の左側を下にして、横向き(シムスの体位)になること」です。これだけで、子宮による大血管の圧迫がパッと解除され、心臓への血流が元に戻るため、驚くほど数十秒でスーッと息がラクになり、動悸も静まっていきます。「苦しくなったら左を向く」というお守りを、いつも心に持っておいてくださいね。
参考文献・引用元
日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン:仰臥位低血圧症候群の予防と対応」
厚生労働省「マタニティステーション:妊娠後期の身体の変化」
