赤ちゃんが新生児室に預けられていて、「今が絶好の睡眠チャンス!」のはずなのに、なぜかベッドの中で目が冴えて一睡もできない……。

出産を終えたばかりの入院中、そんなジレンマに直面して「疲れているのにどうして?」と涙していませんか?今回は、出産直後の入院中という最もデリケートな時期に起きる不眠のメカニズムと、昂った脳を優しくゆるめるためのアプローチをご紹介します。

出産したばかりなのに「眠れない」のはなぜ?交感神経の昂ぶりを知る

「体はヘトヘトなのに眠れない」のは、あなたの心が神経質になっているからではありません。命がけの出産を終えた直後の脳は、興奮や緊張を司る「交感神経」が人生最高レベルまで昂ったまま、急ブレーキが効かなくなっている状態だからです。

いわば、フルマラソンを全力疾走で完走した直後に、「はい、今すぐベッドで爆睡して!」と言われているようなもの。この不眠は体の自然な防衛反応ですので、「眠れなくて当然なんだ」とまずは自分を優しく許してあげましょう。

命がけの出産による脳の興奮と、女性ホルモンの劇的な急減

出産を終えたその瞬間から、妊娠中に大量に分泌されていた女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の分泌は、ほぼ「ゼロ」の近くまで急激に激減します。

このホルモンのジェットコースターのような激変は、脳の自律神経にダイレクトに強烈なダメージを与え、不眠や気分の落ち込みを引き起こします。体内の急激なパラダイムシフトが原因ですから、心がついていかなくて当たり前なのです。

入院中という慣れない環境がもたらす睡眠への影響

さらに、病院のベッドといういつもと違う寝具、規則的な検温や授乳のスケジュール、他の赤ちゃんの泣き声など、入院中の環境は脳にとって刺激でいっぱいです。

睡眠のプロとしてお伝えしたいのは、入院中は「眠ること」を目標にしないこと。ベッドの上で目をつぶり、ただゴロゴロと横たわっているだけで、出産で失った体力の多くは回復していきます。「寝られなくても、横になれているだけで100点満点」と、心にぬくもりのクッションを敷いてあげてくださいね。

参考文献・引用元

  • こども家庭庁「マタニティ・産後ケアガイド:産褥期のホルモン変化と睡眠」

  • 日本睡眠学会「自律神経と睡眠障害のメカニズム」