「やっと赤ちゃんが寝てくれた。今のうちに私も寝よう」。そう思って布団に入ったのに、目がパッチリ冴えてしまう。時計を見ては「あと1時間で次の授乳なのに」と焦る。

そんな夜を過ごしていませんか。疲れているのに眠れない。これは、寝かしつけ期のお母さんにとても多いお悩みです。

このページでは、なぜ疲れているのに眠れないのかという理由から、細切れの時間で眠るための工夫、限界が近いときの判断基準、相談を考える目安までをまとめました。

疲れているのに眠れない理由

脳が24時間、警戒モードになっている

最大の原因は、脳が「いつ赤ちゃんが泣き出すかわからない」と24時間体制で警戒している「過緊張」の状態にあることです。

この警戒センサーは、赤ちゃんを守るために備わった本能です。けれど働きすぎると、お母さん自身の心身がすり減ってしまいます。眠れないのは、あなたが神経質だからではありません。

詳しくは赤ちゃんが寝たのに、自分は眠れない…「疲れているのに眠れない」ママのための睡眠セラピーでお話ししています。

慢性的な寝不足が、かえって目を冴えさせる

睡眠不足が続くと、体はそれを危機と判断してストレスホルモンを出します。すると眠りたいのに目が冴えるという悪循環が生まれます。「疲れているのだから寝られるはず」が通用しないのはこのためです。

まとまった時間がそもそもない

夜間授乳や夜泣きで、眠れるのは1〜2時間の隙間だけ。深い睡眠に入る前に起こされるため、時間の合計は足りていても、休息としては足りていない状態になります。

細切れの時間で、深く眠るために

入眠のルーティンを固定する

時間が短いからこそ、「これをしたら眠る」という合図を体に覚えさせます。手順は何でも構いません。白湯を一口飲む、深呼吸を3回する、同じ音楽を10秒だけ流す。毎回同じ順番で行うことが大切です。

スマートフォンを手放す儀式をつくる

赤ちゃんが寝た瞬間、スマートフォンを見てしまう気持ちはよく分かります。けれど画面の光と情報は、脳を確実に「お仕事モード」へ戻します。充電器を布団から手の届かない場所に置くだけで、変わります。

寝室の環境を整える

遮光カーテンで光を落とし、赤ちゃんの声は聞こえるけれど生活音は届かない程度に耳栓を使う。「聞こえなくなること」ではなく「刺激を減らすこと」が目的です。安心できる範囲で調整してください。

具体的な組み立て方は細切れの睡眠時間でも、スッと深い眠りに入るための入眠スイッチにまとめています。

家事より、眠ることを優先してください

「赤ちゃんが寝ている間に家事をやらなきゃ」。この思い込みが、いちばん睡眠を削ります。

部屋が散らかっていても、お惣菜に頼っても、お母さんが寝るほうが100倍大切です。 家事は明日でも取り返せますが、削った睡眠は返ってきません。

この考え方は完璧を目指さない育児。ママの眠りを最優先するためのマインドセットで、もう少しゆっくりお伝えしています。

限界が近いときの、判断の目安

夜泣きによる寝不足は、ある時点から「つらい」を超えて危険になります。

徹夜明けの脳は、酒気帯び運転と同じ

長時間眠っていない状態の脳のパフォーマンスは、酒気帯び運転と同程度まで落ちると言われています。仕事での重大なミス、車の運転、階段の踏み外し。判断力が落ちている自覚がないことが、いちばん危険です。

仕事を休む・遅刻する判断をためらわない

次のような状態なら、休むか午前休を取ることを考えてください。

  • ほとんど眠れていない日が続いている

  • 物の置き場所を忘れる、簡単な計算を間違えるなど、思考がまとまらない

  • 運転や機械操作をともなう仕事である

  • 感情の起伏が激しく、涙が出たりイライラが止まらない

職場への伝え方は、体調不良として事実だけを簡潔に伝えるのがいちばん角が立ちません。判断基準と連絡の入れ方は夜泣きによる睡眠不足で限界を感じたらと寝不足で仕事がしんどい…無理せず周囲に頼るためのアクションにまとめています。

日中の仮眠で補う

夜に取り戻せない分は、日中の15分から20分の仮眠で補います。長く眠りすぎると夜の眠りが浅くなるので、15時までに切り上げるのが目安です。

相談を考えたほうがよい目安

次のような場合は、地域の保健センターや、かかりつけの産院へご相談ください。

  • 眠れない状態が2週間以上つづき、日中もつらさが取れない

  • 気分の落ち込みが強い、理由もなく涙が止まらない日がつづく

  • 赤ちゃんの泣き声に強い苛立ちを感じ、自分を抑えられないと感じることがある

  • 「消えてしまいたい」という気持ちがよぎる

最後の項目に思い当たる場合は、ためらわずに、今日つながれるところへ連絡してください。あなたが休むことは、赤ちゃんを守ることと同じです。

いつまで続くのか、という問い

夜泣きは、多くの場合生後6か月ごろから1歳半ごろにかけて山を越えていきます。ただし個人差がとても大きく、「うちの子はいつまで」という問いに正確な答えを出すことは誰にもできません。

だからこそ、「終わるまで耐える」ではなく「続く前提で回る仕組みをつくる」という考え方に切り替えることをおすすめしています。気力で乗り切ろうとすると、必ずどこかで折れてしまいます。

パートナーと、夜をどう分けるか

寝かしつけ期で最も効果が大きいのは、夜間の分担です。

  • 時間帯で区切る。「21時から翌1時は自分が寝る時間」と決め、その間の対応をお願いします

  • 曜日で区切る。翌日が休みの日の夜だけでも代わってもらえると、週に一度は深く眠れます

  • 寝室を分ける日をつくる。同じ部屋にいると、対応していなくても物音で目が覚めてしまいます

「母親の自分がやらないと」と感じる必要はありません。お母さんが眠れていることが、赤ちゃんにとっていちばん安全な環境です。

朝の光を浴びる

夜だけを何とかしようとすると行き詰まります。朝、カーテンを開けて光を浴びる。これだけで体内時計が整い、夜の眠気が出やすくなります。

赤ちゃんにとっても同じで、朝の光と日中の活動は夜のまとまった睡眠につながります。散歩に出られない日でも、窓際で数分過ごすだけで違います。

眠れない夜を、ひとりで抱えないために

寝かしつけ期の夜がつらいのは、終わりが見えないからかもしれません。今日をしのいでも、明日も同じ夜が来る。その繰り返しに、心がすり減っていきます。

けれど、同じ時間に、同じように眠れずにいるお母さんは必ずいます。脳が警戒しているだけだと知り、入眠の合図を決め、家事より眠ることを選ぶ。そして限界の前に、休む判断をする。それを重ねていけば、夜は必ず変わっていきます。

下のコラムでは、それぞれのお悩みをもう少し掘り下げています。今夜の自分に必要なものから、どうぞ読んでみてください。

参考文献・引用元

  • 日本睡眠学会「慢性的な睡眠不足と脳の過緊張に関する研究」

  • 厚生労働省「すこやか親子21:育児ストレスと睡眠の質について」

  • 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド」