安定期に入ってホッとしたのも束の間、「夜になると胃がムカムカして気持ち悪い」「お腹が張って寝つけない」「日中のだるさが取れない」。妊娠中期には、初期とはまた違う眠れなさが出てきます。
「つわりは終わったはずなのに、どうして」と不安になる必要はありません。中期の夜の不調は、赤ちゃんの成長にともなって体が変化しているサインです。
このページでは、妊娠中期に眠れなくなる理由から、今夜からできる寝姿勢と食事の工夫、働きながら過ごすための考え方、相談を考える目安までをまとめました。
妊娠中期に眠れなくなる理由
大きくなった子宮が胃を押し上げる
妊娠中期になると、子宮が胃や腸を徐々に押し上げます。すると胃酸が逆流しやすくなり、つわりのような不快感や胃もたれ(マイナートラブル)が起こります。
日中は立ったり座ったりしているので重力で胃酸が下にとどまりますが、夜ベッドに横になると胃と食道が水平になるため、逆流しやすくなります。これが「夜になると気持ち悪い」の正体です。
この仕組みと夜のルーティンは夜になると気持ち悪い…心地よく眠るための夜のルーティンで詳しくお話ししています。
消化管の動きがゆるやかになる
妊娠中は、消化管の動きをゆるめるホルモンが分泌されています。そのため食べたものが胃の中に長くとどまり、胃もたれやげっぷが増えます。同じ量を食べても、妊娠前より重く感じるのはこのためです。
お腹の張りと寝返りのしにくさ
お腹が目立ち始め、これまでの寝姿勢では落ち着かなくなります。同じ姿勢が続くと腰や股関節が痛み、夜中に目が覚める原因になります。
日中のだるさと仕事の疲れ
安定期は「動ける時期」と言われますが、実際には朝起きられないほどのだるさが出る方も少なくありません。立ち仕事や長時間のデスクワークは、その日の睡眠の質を確実に下げます。
今夜からできること
上半身を少し高くする
胃酸の逆流をやわらげる、いちばん手軽で効果的な方法です。枕を重ねるのではなく、肩の下から背中にかけて、なだらかな傾斜をつくるのがコツです。首だけを高くすると、かえって苦しくなります。
体の左側を下にして寝る
胃の構造上、左を下にすると胃の出口が下向きになり、内容物が腸へ流れやすくなります。逆流の予防に加え、大きくなった子宮による血管の圧迫も避けられます。「横向き(シムスの体位)」として、妊娠中期から習慣にしておくと、後期になってからがラクです。
枕やバスタオルの当て方はお腹の苦しさや胃のムカムカを軽減する枕の使い方と寝姿勢にまとめています。
夕食はベッドに入る3時間前までに
脂っこいものや刺激物は避け、あたたかいスープやうどんなど、胃にやさしいものを選びます。食後すぐ横にならず、しばらくソファでゆったり過ごすだけでも、夜間の逆流はかなり減ります。
おやすみ前の30分を「ゆるめる時間」にする
自律神経が整うと消化もスムーズになります。強いストレッチではなく、体をゆるめる程度の動きで十分です。ノンカフェインのあたたかい飲み物を添えると、体温がゆるやかに下がって眠りに入りやすくなります。
具体的な過ごし方はおやすみ前のひと工夫で心と胃腸をリラックスさせる方法でご紹介しています。
働きながら、この時期をどう過ごすか
妊娠中期は「まだ働ける」と思われやすく、無理を重ねやすい時期です。しかし日中の疲れは、その日の夜の睡眠の質にそのまま出ます。
立ち仕事は、こまめに座る時間を確保する。足のむくみは夜のこむら返りにつながります
デスクワークは1時間に一度立つ。同じ姿勢が続くと腰の負担が蓄積します
「朝起きられない」は母性保護のサイン。甘えではありません
体調がつらいときは、母健連絡カード(母性健康管理指導事項連絡カード)という制度があります。医師の指示を職場に正式に伝えるための書類で、勤務時間の短縮や休憩の確保を求められます。使うことに引け目を感じる必要はありません。
働き方の見直しは立ち仕事・仕事がつらいと感じたらと「仕事に行きたくない、だるい」と感じる日の心と体の休ませ方にまとめています。
それでも眠れない夜に
工夫をしても眠れない夜はあります。そんなときは、横になって目を閉じているだけで、起きているときの約7割の疲労回復効果があることを思い出してください。
「早く寝なきゃ」と思うほど脳は覚醒します。眠れた時間を数えるのをやめ、日中に体調が良いタイミングで少し横になる。それで十分に体は回復していきます。
相談を考えたほうがよい目安
妊娠中期の不調の多くは自然な変化ですが、次のような場合は次の健診を待たずに主治医や助産師へご相談ください。
胃の痛みが強く、食事がほとんど取れない
お腹の張りが規則的にきている、出血がある
眠れない状態が2週間以上つづき、日中もつらさが取れない
気分の落ち込みが強く、涙が止まらない日がつづく
頭痛や目のかすみ、急なむくみをともなう
こむら返りと足のむくみへの備え
妊娠中期から、夜中にふくらはぎがつって目が覚める方が増えます。原因は血流の滞りとミネラルのバランスの変化です。
寝る前にふくらはぎを温めてほぐす。足首をゆっくり回すだけでも違います
足を少し高くして寝る。クッションを足元に入れると、むくみが軽くなります
日中にこまめに水分を取る。夜間のトイレを気にして減らすと、かえってつりやすくなります
つってしまったら、つま先を手前に引き寄せる。ふくらはぎを伸ばすと治まります
寝具を見直すなら、この時期に
お腹が大きくなる後期になってから寝具を変えるのは大変です。妊娠中期のうちに整えておくと、そのまま後期まで使えます。
まず効果が大きいのが、抱き枕です。横向きになったとき、上の足を乗せて太ももから足首までが水平になる厚みのものを選びます。次に、シーツやパジャマをすべりのよい素材にすること。寝返りの引っかかりが減り、途中で目が覚めにくくなります。
高価な寝具を買い足す必要はありません。バスタオルを丸めたもので代用できる部分も多いので、まずは手持ちのもので試してみてください。
眠れない夜を、ひとりで抱えないために
妊娠中期は、周囲から「安定期だから大丈夫でしょう」と見られやすい時期です。実際には体の変化が続いていて、夜のつらさは本人にしか分かりません。
理由を知り、寝姿勢と食事を少し変え、それでも眠れない夜は「横になっているだけで休めている」と自分に言ってあげる。その積み重ねが、夜を穏やかにしていきます。
下のコラムでは、それぞれのお悩みをもう少し掘り下げています。今夜の自分に必要なものから、どうぞ読んでみてください。
参考文献・引用元
厚生労働省「ヘルスケア情報:妊娠中のマイナートラブルとその対策」
日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン:妊婦の消化器症状について」
厚生労働省「母性健康管理指導事項連絡カードについて」
